仙台市地域防災計画[原子力災害対策編]=暫定計画案の問題点
私は「女川原発から50kmの仙台市でも原子力災害に対する防災計画を持つべきだ」と繰り返し主張し、市は検討をしています。地域防災計画の本体と地震・津波対策編は、今年度中に見直し防災会議で決定します。新たに作る「原子力災害対策編」は、原子力防災部会・作業部会をこれまでにそれぞれ2回、5回開いて「暫定計画案」としました。年度内にはこの暫定計画案を防災会議で承認し、来年度に「暫定」でない計画にするとしています。
仙台市が想定する災害としては、「市民が至急の避難を必要とする事態に至る可能性は高くないが、屋内退避や安定ヨウ素剤の予防服用が必要となる可能性があ」るとしています。根拠は、国の原子力災害対策指針で「避難および屋内退避を必要とする範囲は原子力施設から概ね10km以内」としていることと、女川から仙台向きの風(東北東)が吹く確率が、1%から15%ということらしい。
原子力規制委員会の拡散シミュレーションも同様だが、風向きの確率は本来ゼロでなければ最悪の被害想定には関係がない。そもそも、「過酷事故は起きる確率が小さいので想定しない」としていたのと同じ誤りです。
月ごとの平均風速のデータも年ごと月ごとにバラつきがあり、2m~10mです。風速5mだと、仙台にプルームが到達するのに3時間弱、風速10mだと5時間半になります。これだけの時間に、緊急避難は困難ですが、「必要とならない」といえるものではありません。
情報収集体制では、モニタリングポストの設置など独自の収集能力をあげる項目もありますが、国や県、電力事業者との連携では強い意志が感じられません。県を通じての情報では、スピードも優先順位としても30km圏ではない仙台市は後回しにされる危険があります。オフサイトセンターに仙台市からも職員配置することが必要だと感じます。
市域内の放射線モニタリングをリアルタイムで把握することはもちろんですが、原子力施設での状況もリアルタイムで監視・記録する体制を市でもとることです。
事故時、市民がとる「屋内退避」のイメージが明らかでないことも問題です。言葉だけでは、委員の方も含めて認識が一致しているのか不安です。意味のある屋内退避になるように、学校など避難施設の整備に何が必要なのか。各家庭では、何ができるのか。具体化はこれからということでしょう。
安定ヨウ素剤の配備についても、素案の段階であった否定的記述は削除されましたが、今後の検討となっています。
知識普及・啓発・防災訓練では、原子力災害が起きた時、どうやって身を守るのか、時系列的にわかりやすく解説する必要があると思います。
そして、一番の安全のためには、原子量発電所を再稼働させない、廃炉に向かうという根本問題もきちんと伝えるべきです。
今回の原子力防災部会・作業部会では、電力事業者(東北電力)からの委員が①情報発信は県と調整して一元化すべき(市が勝手に判断するな)、②仙台市の地域防災計画は自助共助が位置づけられたが原子力災害対策編にも自助共助を位置づけるべき・・・などと発言しました。傍聴していて、思わず声を上げてしまうところでした。
さすがに、市当局や東北大学の先生からも、原子力災害は他の自然災害と違う、原子力災害の特徴から考えるべきだ、自助共助と言っても正しい知識がなければ市民にはむずかしい、などと即反論がありました。
電力会社から仙台市にも情報を出す問題でも、やみくもに連絡先を増やされては困る、県に流すから県からとってくれという態度。事前の自治体の備えを大きくしないでほしいという態度などが見えましたが、原子力災害が起きた時は、自分たち事業者が加害者となっていることを全く認識していない態度です。
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